続けて頂く、という事

毎月のイベント香席は、青山ゑり華さんで10年以上続けさせて頂いているのですが、

去年の初夏から、初めて自分で運営する「お稽古会」を始めてみて、

お稽古を続けて頂く事の難しさを、しみじみ感じています。

 

そもそも、A.イベント香席と、B.お稽古会の違いとは、

 

Aは、毎回の参加者募集で、メンバーは毎回違います。客として必要な所作等はお伝えしますが、それよりも、香りと組香を楽しんで頂く事が第一です。

 

Bは、継続しての参加が基本で、香りと組香を楽しんで頂く事が大事なのはAと同じですが、プラス、香道においての大事な事を知って頂き、身につけて頂くことが加わってきます。所作や手前の習得もそこに入ります。

 

初心者の方にとっては、AとBの違いは、内容的にはほぼ同じに感じられるでしょう。

では何が違うのかというと、それは「継続的に通う」事だと思います。

 

これが難しい…

 

若い方もそれなりにお忙しいし、環境や心境にいろいろな変化があったりします。

年配の方もそれなりにお忙しいし、体調の変化もあったりします。

 

毎月たった一日だけでも、その日を必ず香道のために空けておく事ができるのか、と言うと、

それはもうシビアな話、その方にとっての優先順位次第になると思うのです。

 

参加費も関係あるでしょう。

古心流では一回のお稽古代は4500円が基本と定められています。(2023年現在)

 

そこには「香木代」が含まれます。

プラス「香木を拵える事 (経験を積んだ香人でないと適切に拵えられないと思います)」、

さらには「香席を行う準備(組香のレジュメや資料の制作)」、

そして「当日の香席を行うための人件費」が含まれると思っています。

 

上記を熟慮した上で定められた「4500円」だと思いますが、

私は、4500円という金額は、決して気軽なものではないと思っています。

参加者にとって、それに見合った、実りあるひとときが過ごせたかどうか…は、

お稽古を続ける上で重要な判断要素となるでしょう。

 

「優先順位」

「参加費」

これは、講師側では直接的にはなんともしようがありません。

何が自分にとって大事かという優先順位は、その方が決める事ですし、

参加費が負担にならないかどうかもその方の判断次第です。

 

講師に出来る事は、毎回の稽古内容と過ごして頂くひとときを

より良いものにする事だけ。

 

でも、もうひとつ、出来ることがあるようにも思います。

 

30年近く前の話になりますが、

私がお香の稽古に通い始めて、半年たったあたりの頃、

やめようかなと思った時期がありました。

 

その理由は、

「優先順位」でも「参加費」でもありませんでした。

 

その頃は、お稽古会に、私よりずっと年上の大勢の先輩がいらして、

皆様、日本の古典など色々な事をよくご存じで、

(こんなに沢山の知識がないと香道はできないのか…)と愕然とし、

私には無理かもしれない…と思い始め、

自分はここに存在しなくてもいいように感じたのです。

「居場所がない」という感覚ですね。

 

そうして、何回かお稽古をお休みしたある日、

その時ご指導を受けていた先生からお電話がかかってきて、

「どうなさったの…」という、お言葉を頂きました。

私なんて、ものの数にも入らない生徒だと思っていたので、

尊敬していた先生からお電話を頂き、

(これは、お稽古を続けなければ…!)と、発奮いたしました。

 

単純でしょう (笑)

 

その時の事をあとから先生にお話ししても、先生は覚えておられませんでした。

つまり、(生徒、継続の危機!)と思われて電話なさったわけではないのです。

でも私には、将来を左右するほどの電話でした。

 

「あなたの事をちゃんと見ていますよ」という言葉やサイン、

そこに、

指導者にできるもうひとつの事があるような気がします。